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【風のたより(4)】 by 銀の星
・16回〜20回まで('04/09/20〜05/02/08)

第20回(2005/02/08)

 今回は、ちょっと珍しい(?)白樺派関連資料のご紹介をしたいと思います。

 それは、武者小路実篤の絵とエッセイが、そのまま表紙にもなっていたという雑誌のお話。
 誌名は『北方風物』(主宰・更科源蔵、編集兼発行・代田茂)、創刊は戦後間もない昭和21年1月。北海道出版のローカル誌でした。昨年暮れ、北海道立文学館の展覧会、《仙花紙(せんかし)からの出発 ─雑誌に見る『戦後』の姿─》(2004/12/04/〜26)の展示の中で見つけました。

 武者小路とこの雑誌の関わり・時代背景などについては、武者小路実篤 Episode-2 の中でご紹介しておりますので、そちらもどうかご覧下さい。ただ、この会期中には、北海道の戦後出版事情に関するセミナーも開かれ、展示や小冊子と合わせてずいぶん興味深い話を知る事ができましたので、その事についても、若干ご説明しておきたいと思います。

実は、終戦直後から昭和24年までの4年間というもの、北海道では、かつてないほど、出版業が好況を呈していました。東京その他本州の、それも大手中堅の出版社が、こぞって引っ越してきていたのです。そんな時代があったなんて、ご存じでしたか?

 それは一体なぜ?その最大の理由は、何と言っても大空襲です。東京をはじめ、出版の拠点となっていた街々は、太平洋戦争の終わり頃には、軒並み被害を受けていました。
 さて終戦後、それまでの言論・出版関係の法令が撤廃となります。書店は新しい本を出したい、むろん書き手も書きたい。人々も活字に飢えている。なのに出版社も印刷所も壊滅状態…。そこで出版社は、早急に、空襲のダメージが比較的少なく、印刷所を作るスペースのある土地に移動する必要があったのです。
 加えて、この地では、敗戦になって全国的に紙の配給状況が厳しくなっても、なぜか旧陸軍や米軍から放出された紙が手に入りやすかった…という、隠れた裏事情もあったようです。

 そこで、講談社・筑摩書房・鎌倉文庫・創元社といった有名な本州の出版社が続々と北海道に進出し、ピーク時には、その数、なんと21社にものぼったとか。本拠は主に札幌市。まだ、市の目抜き通りの建物ごとに、占領軍の旗がずらりと翻っていた時代のことです。出版社は、ここから、〈札幌版〉〈道内版〉と銘打った雑誌を世に送り出しました。『週刊朝日』『サンデー毎日』も、当時は北海道版を出していたそうです。また単行本でも、北海道版と本州版で装幀・組版を変え、同じ内容の別バージョンを出すこともあったとか。

 この盛況が、地元・北海道も刺激しないわけがありません。昭和21年までは、全道に出版社はたった18社。それが、その後わずか2年間で、125社までに増えたのです。
 もちろん戦後のドサクサのこととて、粗悪なカストリ雑誌のたぐいも多かったのですが、そんな中にも、“地方にも立派な文化誌を作りたい”という熱意から創刊された雑誌はありました。その代表的な一冊が、上の『北方風物』です。

 毎号、北国の風物を一つテーマにとりあげ、表紙画にはそれにちなんだ図柄を掲げるという趣向で創られたこの雑誌。表紙自体がゲスト執筆者のエッセイ&イラストページという構成は、ものの無い時代の工夫とはいえ、なかなか洒落たレイアウトです。その、記念すべき創刊号の表紙担当が、武者小路実篤だったというわけです。よくよく、“雑誌創刊”に縁のある方です。

 以降、表紙画・文を寄せたのは、川上澄生(「ストーヴ」の版画)・高村光太郎(芽吹く枝の絵)・武井武雄(村祭の絵)などなど。日本画で有名な小杉放庵(未醒)・山口蓬春なども1回ずつ表紙を担当していて、今からみると、かなり豪華なゲストメンバーです。ちなみに、武者小路は“かぼちゃの巻”(第9号)で、もう一度表紙を手がけています。有島生馬も、表紙ではありませんが、エッセイ(「トマトに寄す」)とイラストを第10号に寄稿しました。もちろん、地元の文筆家も熱心に参加し、たとえば木田金次郎なども、たびたび画文を提供しています。

 意欲満々の誌面の『北方風物』でしたが、残念ながら、途中で、他の雑誌なみに表紙と内容を分けるようになってからはかえって独特の魅力が減じ、結局、足かけ2年(全15号)で終刊。また、昭和26年に印刷用紙の統制が解禁になると、大手出版社は、輸送費等でコスト高になる北海道に見切りをつけ、次々と帰ってゆきました。かくて、北海道出版業界の好況も、ひとときの夢となってしまったのです。
 でも、戦後に、新たな出版文化が東北や長野にまでも広がったのは、こういう時期があったからこそ、とのこと。また、短命だった『北方風物』も、現在では、戦後の地方誌ブームのさきがけとして、高く評価されているようです。

 あれ?いつのまにか表紙のじゃがいもにバターがのっかっている…?(→)
 理由をお知りになりたい方は、武者小路実篤 Episode-2 へどうぞ!

参考文献:
「企画展 仙花紙からの出発 〜雑誌にみる「戦後」の姿〜」(カタログ) 北海道立文学館 平成十六年(2004)
『北海道文学大事典』 北海道文学館 昭和六十年(1985)

Special Thanks to....
武者小路実篤会 & 北海道立文学館の皆様!



第19回(2005/01/02)

 新年おめでとうございます。波瀾万丈の2004年がようやく過ぎ、お陰様で無事、2005年を迎えることができました。
 といっても、私自身の身の上には、それほど大変なことがあったわけではないのですが。ただ、テレビで津波のニュースを見たりしながら、“何事もなく無事に過ごせること”のありがたさを、しみじみと思った次第です。

 あれほどの深刻な事態ではなくとも、日本でも、2004年の大みそかには、まるで1年の仕上げとばかり、全国各地で大雪が降りましたしね。除雪に備えがある地方ならいざ知らず、あんなに降られては、高速道路も役には立ちません。“ギリギリまで仕事して、帰省は大みそかに”と思っていた人たちにとっては、とんでもない番狂わせだったことでしょう。初もうでの計画がおじゃんになってしまった人も、きっと大勢…。本当に皆様、お疲れさまでした。(-_-;)

* * * * * * * *

 さて、少しお正月らしいお話を。
 家は、小人数ということもあって、もう、お重入りのおせちなどは作りませんが、それでもやっぱり新年らしい彩りは欲しいもの。紅白のかまぼこに紅白なます、こぶ巻き、そして黒豆。これが並ぶだけでも、新春気分はぐっと違います。

 そのほか、家ではごまめの代わりに、ワカサギのあめ炊きか、くるみ入りのシラス(=小女子・こおなご)の佃煮を並べます。特にくるみ入り佃煮は、北海道・寿都(すっつ)の名産で、甘すぎず食べやすく、おすすめの一品。ふだんの食事にも合うのですが、お正月には、少し甘み系のものが入ると、おせちらしい感じが出ますよね。

 そこで、やはり甘み系の代表といえば、きんとん!私は、豆きんとんでも栗きんとんでも大好きなのですが、売っているものは、どうも、とろ〜り・ねっとりとして甘すぎます(だから苦手という人も多いのでは?)。
 そこで、きんとんだけは、どんなに忙しい年末でも極力、自分の手で作るようにしています。さつまいもさえ身が黄色くてほっくりしたのを選んでおけば、あとは栗のびんづめ(シロップも使用)だけでOK。甘味が物足りなければ、砂糖やはちみつ等で調節できます。市販のものよりたくさん食べられて大満足!この暮れもしっかり作りました。

 その他、時間さえあれば、伊達巻きも手作りのものが好きなのですが…今年はまだ作っていません。材料はあるので(さかなのすり身と卵と山いも)仕事始めに出かける前に作りたいのですが、さて、どうなることやら。

(1月3日付記)
 やっぱりお正月に伊達巻きを食べないのは物足りないので、今日、作ってみました。ちょっと卵っぽさが残っていて、“材料をもっとしっかりミキサーで混ぜておけばもっとフンワリ感が出たかも”とは思いましたが、でも、そこそこの出来となりました♪



第18回(2004/11/30)

 11月のうち半月ほどは、のど風邪にたたられてしまいました。ここ数年は、あまりひどい風邪をひかずにすんでいたものですから、最初に少しのどがヒリヒリした時も、(熱もないし、これなら軽くすむはず)と思ったのが甘かったのです。熱はその後もほとんど出ませんでしたが、のどの腫れとセキの辛さといったら…。やっぱり3日ほどは寝込みました。今は幸い、昼間は、ほとんどセキの事を忘れていられます。でも、夕方や夜や、時には寝入りばなになってから、急に、思い出したようにセキが続くので、まったくユーウツです。はやくスッキリするといいのですが。

 それでも、今年の北海道は、11月中ずっと暖かい気候が続いていたので、「今年は夏が暑かっただけに、秋があったかいね」「雪なんか降るのかね。きっと遅いね。クリスマス頃かな」なんて会話を皆で交わしていたのですが…。

 それが、25日過ぎから突然寒くなって、なんと冬早々から台風並みの〈爆弾低気圧〉来襲!そして、週末から月曜にかけ、突然の大雪!たった一晩で、うちの庭にも門柱にもこんなに雪が(←)!
 そのうえ29日は朝3時半に、震度3〜4の地震!(眠いどころの話でなく、飛び起きました。釧路や日高では震度5!)そして今日、積雪はすでに数十センチ!
 もうこうなると、“自然の猛威はすごい…”といった謙虚な気持ちを通り越して、だんだん腹が立ってきます。“今年の天気天災は、力加減というものを知らんのか!(`_´メ)”世界的な異常気象は、もしかするとこれからも続くのかもしれませんが、こう何でも立て続けに、という状況は、かんべんして欲しいといった気分です。

(下は自家(うち)のすぐそばの風景。北海道屈指の水田地帯も、今は見はるかす限りの雪原です。)



第17回(2004/10/25)

 今年は竜巻・猛暑・集中豪雨・台風と続いて、つい先日“ああようやく超大型台風がいった、もう台風は来なくていいよ”…と思ったばかりだったのに、今度は中越地方が中心の大地震!!
 確か1月のはじめ頃、〈申年(さるどし)は災害が多い〉という話を何かで読んで、そんなものかなぁと思った記憶があるのですが、こと今年に関する限り、そのセオリーは大的中。というか、当たりすぎだと言えましょう。もうわかりました、もういいです!と言いたい気分です。なお、星的に言えば、先月までは獅子座〜乙女座の方角に、今は天秤座〜さそり座にかけて、惑星が集まりすぎているのもあんまり良くないのかも知れません。天空にしろ、気象・地盤にしろ、何でも〈気〉のかたよりは良くない結果を生むようで…。

 それにしても、今あらためて考えると、信越・北陸地方であんなにクマが人里に出ていたのも、もしかすると彼らの予知的行動だったのかも知れませんね。洪水でエサがなくなっただけじゃなくて、今、山奥にいたら危険なことになるという虫の知らせで…。
 ただ、悲しいかな、クマたちはその感覚を人に言葉で伝えられないし、人間もクマにおどろくばかり。それを天災に結びつけて考えることができた人は、結局一人もいなかったというわけで。ヒトってやっぱりニブッていますね。

 そういえば、先日、札幌の街なかの公園で、ヤマガラを見かけました。その時は、珍しいと思っただけなのですが、これもよく考えると、そもそもヤマガラって、警戒心が強くて山からはなかなか下りてこない小鳥のはず。それが、いくら木の多い公園とはいえ、都市のまん中で、スズメの群れと一緒に餌をついばんでいるなんて。このあたりでも、まだ何かあるという事?……まだしばらくは、心しておかなければ。

 まあ、こんなたいへんな事の多い世相ですが、それでも、今度の地震で印象的だったのは、本震の翌日の早朝、さっそくに、遠くはなれた葛飾から給水車が到着したという報道。“君は君、我は我”、いつもは無縁のようでも、人と人の間には、見えないリンクが張りめぐらされているのかも知れません。こういう時に思いがけないつながりがパッとあらわれて来るって嬉しいですね。みんなCheer Up!



第16回(2004/09/20)

 私事ではありますが、また、今週末から釧路に行ってまいります。で、是非それまでに、まずは「もうめんたリズム」を、と思って準備してきたのですが、どうも今月は思いがけない予定が半ば以降に集中した事もあって、行く前までにはUpが間に合いそうもありません。となれば次の更新は、どうしても10月はじめ…。
 ではせめて、今回はお詫びかたがた、〈風のたより〉でも更新してゆこう。さて何を書こうかな…。そう思いながら心の向くままにしるしたのが、以下のおはなしです。

* * * * * * * *

 今日は、地元の秋祭り。年々、規模は控えめになって来ているけれど、私の子供の頃とちょっと違うところは、去年あたりから、駅前の広場で郷土の物産展を開くようになった事です。
 まあ、物産展といっても大げさなものではありません。ただ、いわゆる〈観光みやげ〉ではなく、近隣の町や村の“地産地消”的な農作物や加工品が屋台で売られるというのが新しい点です。りんごとカスタードクリームたっぷりのパイやら、揚げじゃがいもの“ポテまる”やら、地元のお米で出来た玄米パンにジャンボしょうゆ団子、それに昔なつかし味の栗まんじゅうやら…。

 そんな中でも、特に大人気の屋台が〈美唄(びばい)焼き〉
 実はこれ、焼き鳥なんですが、一般的な焼き鳥とはちょっと変わっているのです。

 普通の焼き鳥といえば、たいていは、〈お肉〉か〈つくね〉か〈鳥皮〉などと、串によって種類が分かれていますね。でも美唄焼きの特徴は、お肉も、鶏モツも、卵(卵巣)も、鳥皮も、みんな一緒の串に刺してしまうところ。美唄市では以前からこういう焼き方が当たり前だったらしいのですが、すぐ近くなのに、私は去年まで全然知りませんでした。でも、この地域(空知地方)ではすでに知る人ぞ知る絶品ローカルメニューだったらしく、屋台の前には常に行列。お昼どきに限らず、いつも必ず十数人は並んでいて、途切れる事がありません。

 私も今年は、ならんでみました。「もつ」(鶏モツ主体)「せい」(お肉だけ。多分精肉のこと)の2種類があって、どちらも1串90円(消費税込み)。食べてみたら、コショウの利いたスパイシーな塩味。「せい」のお肉も柔らかくておいしかったけれど、やっぱり「もつ」にはシコシコ感とコクがあって、絶妙なお味でした。卵が刺さっていると、なぜだかおトク感がありますしね。お酒好きの人にも、これは絶好の肴(さかな)でしょう。

 と言うわけで、帯広の〈豚丼〉についで、ひそかにブレイクの予感かも(?)という〈美唄焼き〉のお話でした。

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